[著者情報]
この記事を書いた人:徳永 由紀子(とくなが ゆきこ)
野菜ソムリエプロ / 料理研究家
大手料理教室で10年間講師を務め、3,000人以上の生徒に野菜の選び方と調理法を指導。野菜農家との交流も深く、食材の背景にあるストーリーを伝えることを得意としています。
読者の皆様へ 「新しい食材を前にした時の、あのワクワクと少しの不安、とてもよく分かります。でも大丈夫。理由さえ分かれば、料理はもっと自由で楽しくなりますよ。私がしっかりサポートしますね。」
スーパーで「ちぢみほうれん草」を手に取り、「普通のほうれん草とどう違うの?」「どうやって食べれば美味しいの?」と迷っていませんか?
ご安心ください。その違いは「栽培方法」にあり、実はアクが少なく調理は驚くほど簡単です。
この記事では、単なるレシピの紹介ではなく、「なぜ甘いのか」という理由から解説するので、もう調理法で失敗しません。
読み終える頃には、下処理から定番レシピまで自信がつき、今夜の食卓の主役として、家族が喜ぶ一品を迷わず作れるようになります。
まずはココから!ちぢみほうれん草と普通のほうれん草、3つの決定的な違い
私も料理教室を始めたばかりの頃、生徒さんから「ちぢみほうれん草って、なんだか扱いが難しそう」という声をよく聞きました。見た目が個性的ですものね。でも、ポイントさえ知れば、ちぢみほうれん草はむしろ普通のほうれん草より調理が楽な、心強い冬の味方になってくれます。
まずは、多くの方が疑問に思う3つの決定的な違いから見ていきましょう。
- 見た目の違い: 名前の通り、葉が肉厚で、地面を這うように横に広がり、表面がキュッと縮れているのが、ちぢみほうれん草の最大の特徴です。この姿こそ、美味しさが凝縮されている証拠なんですよ。
- 味の違い: 一番の違いは、その強い甘みです。フルーツに匹敵するほどの糖度があり、ほうれん草特有のえぐみが少なく、味がとても濃く感じられます。
- 食感の違い: 葉が肉厚でしっかりしているため、加熱してもクタッとなりにくく、シャキシャキとした歯ごたえを楽しめるのが、ちぢみほうれん草の魅力です。
📷️通常のほうれん草とちぢみほうれん草の比較

甘さの秘密は「寒締め栽培」にあり!理由がわかれば調理は怖くない
「でも、なぜそんなに甘くなるの?」と思いますよね。その秘密は「寒締め(かんじめ)栽培」という特別な育て方にあります。
寒締め栽培という特殊な製法が原因で、ちぢみほうれん草の糖度が高まるという結果が生まれます。 これは、ほうれん草が冬の寒さから自分を守るための、いわば自己防衛本能によるもの。気温が下がると、ほうれん草は細胞の中の水分が凍ってしまわないように、体内のデンプンを糖に変えて糖度を高めるのです。
この健気な働きのおかげで、私たちの食卓に驚くほどの甘みが届くわけですね。そして、この寒締め栽培の過程で、ほうれん草のアク(えぐみ)の元となる硝酸が減ることも分かっています。
つまり、「甘くて、アクが少ない」のには、しっかりとした理由があるのです。この理由が分かれば、「アク抜きはどうしよう…」と不安に思う必要がないことも、ご理解いただけると思います。
🎨ちぢみほうれん草が甘くなるメカニズム

これだけ押さえればOK!失敗しない下処理と茹で方の全手順
理由がわかったところで、いよいよ実践です。ちぢみほうれん草の美味しさを最大限に引き出す、失敗しない下処理と茹で方の手順を、4つのステップで具体的にお伝えします。
ちぢみほうれん草はアクが少ないという特性を持つため、茹で時間は1分〜1分半と短くて済みます。 このポイントが、調理をぐっと楽にしてくれます。
ステップ1:根元の土をしっかり洗う ちぢみほうれん草は地面に近く、根元に土がたまりやすい構造をしています。ボウルに水を張り、株元を水に浸して優しく振り洗いすると、葉を傷つけずにきれいに土を落とせます。
ステップ2:塩を加えた熱湯でさっと茹でる 大きめの鍋にたっぷりのお湯を沸かし、お湯に対して1%程度の塩(お湯1リットルなら塩小さじ2)を加えます。根元の硬い部分から先にお湯に入れ、30秒ほど経ったら葉全体を沈めてください。茹で時間は全部で1分〜1分半が目安です。
ステップ3:冷水に取って色止めする 茹で上がったら、すぐに冷水に取ります。こうすることで、余熱で火が通り過ぎるのを防ぎ、鮮やかな緑色を保つことができます。
ステップ4:水気をしっかり絞る 粗熱が取れたら、根元を揃えて持ち、水気をしっかり絞ります。ここで水気が残っていると味がぼやけてしまうので、優しく、しかし確実に絞りましょう。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: ちぢみほうれん草を茹でる際は、タイマーを使い「茹ですぎ」を絶対に避けてください。
なぜなら、この点は料理教室の生徒さんが最もやりがちな失敗だからです。良かれと思って丁寧に茹でてしまうと、せっかくのシャキシャキした食感が失われ、甘みも抜けてしまいます。「少し早いかな?」くらいで引き上げるのが、美味しさを保つ最大のコツです。この知見が、あなたの調理の助けになれば幸いです。
まずはコレを試して!ちぢみほうれん草が主役になる鉄板レシピ3選
下処理が済んだら、いよいよ味付けです。レシピは無数にありますが、まずはちぢみほうれん草の個性を一番楽しめる、シンプルで間違いのない3つのレシピから試してみてください。
1. 素材の味がわかる「絶品おひたし」
まずは、その甘さをダイレクトに感じてみてください。茹でたてに醤油と鰹節をかけるだけ。いつものほうれん草との味の濃さの違いに、きっと驚くはずです。
- 材料: ちぢみほうれん草 1束、醤油 適量、鰹節 適量
- 作り方:
- 上記の手順で茹でて水気を絞ったちぢみほうれん草を、食べやすい長さに切る。
- 器に盛り付け、醤油を回しかけ、鰹節を乗せたら完成。
2. 家族が喜ぶ「ベーコンとバター醤油ソテー」
糖度が高いちぢみほうれん草と、バターのコク・塩分は最高の組み合わせです。 ベーコンの旨味も加わり、お子さんも喜ぶ、ご飯が進む一品になります。
- 材料: ちぢみほうれん草 1束、ベーコン 50g、バター 10g、醤油 小さじ1、塩こしょう 少々
- 作り方:
- ちぢみほうれん草は下茹でせず、よく洗って5cm長さに切る。ベーコンは1cm幅に切る。
- フライパンにバターを熱し、ベーコンを炒める。
- ベーコンに焼き色がついたら、ちぢみほうれん草を加えてさっと炒め合わせる。
- 葉がしんなりしたら醤油を回し入れ、塩こしょうで味を調えたら完成。
3. 作り置きにも「やみつきナムル」
ごま油の香りが食欲をそそるナムルは、作り置きにもぴったり。しっかりした食感のちぢみほうれん草は、ナムルにしても水っぽくなりにくいのが嬉しいポイントです。
- 材料: ちぢみほうれん草 1束、ごま油 大さじ1、醤油 小さじ1/2、鶏がらスープの素 小さじ1/2、すりごま 適量
- 作り方:
- 茹でて水気を絞ったちぢみほうれん草を、食べやすい長さに切る。
- ボウルに全ての調味料を入れ、ちぢみほうれん草を加えて和えたら完成。
もっと知りたい!ちぢみほうれん草の栄養・保存方法・FAQ
最後に、よくいただく質問にお答えしますね。
Q1. 栄養は普通のほうれん草と違うの? A1. はい、違います。寒さに耐える過程で栄養が凝縮されるため、ビタミンCは通常のほうれん草の約3〜4倍、β-カロテンや糖度も豊富に含まれています。美味しくて栄養価も高い、冬にぴったりの野菜です。
Q2. 保存方法は? A2. 湿らせたキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で立てて保存してください。葉が傷みやすいので、2〜3日中には食べきるのがおすすめです。
Q3. 本当にアク抜きは不要? A3. はい、基本的に不要です。ちぢみほうれん草はえぐみが非常に少ないため、さっと茹でるだけで十分美味しくいただけます。シュウ酸が気になる方は、茹でてから使う調理法をお選びください。
まとめ:自信を持って、今だけの旬の味を食卓へ
ちぢみほうれん草は、見た目に反して実はとても扱いやすい野菜です。
- 甘さの秘密は「寒締め栽培」にあり、アクが少ないのが特徴。
- 下処理は1分半さっと茹でるだけでOK。
- まずはバターソテーやおひたしで、その濃い味わいを実感してみてください。
理由がわかったあなたなら、もう大丈夫。自信を持って、12月〜2月という今だけの旬の美味しさを、ぜひご家族と楽しんでくださいね。キッチンに立つ時間が、もっとワクワクするものになるはずです。
この記事で紹介したレシピを作ったら、ぜひ感想を聞かせてください!
[参考文献リスト]
参考文献
- JA全農いばらき アモーレ. 「ちぢみほうれんそう|いばらきの農産物」. https://www.zennoh.or.jp/ib/amore/crop/wrinkle_spinach.html
- macaroni. 「ちぢみほうれん草のおすすめレシピ30選。えぐみが少なく使いやすい!」. https://macaro-ni.jp/23700
- 畑とキッチン. 「ちぢみほうれん草の食べ方|味の特徴やおいしい食べ方など」. https://oishii-yasai.com/tidimi-hourensou.html
- とちぎ農産物マーケティング協会. 「農産物情報 ちぢみほうれんそう」. https://tochigipower.com/?page=c-019tijimihouren
